どうせ俺に聞こえるように言ってんだろうけど。

っていうか、俺はなびのことタイプって言ったことなんかあったっけ?



「……俺はなびがタイプ、っていつ言った?」



カフェオレのペットボトルを取り出して冷蔵庫を閉めたついでに、うしろのソファでくつろぐ面々に声をかける。

空いている黒いソファに腰を下ろせば、「何言ってんの?」って顔をされた。



「椿って、

タイプも理想も好きな人も全部はなびじゃん」



「……、ちょっと待て最後」



「何も間違ってないでしょ?」



どこが違うの?と首をかしげるのは、紫呉(しぐれ) 珠紀(たまき)

『花舞ゆ』に上下関係はねえんだけど、一応形式上のピラミッドがあって、コイツはその二番目に君臨する男。ちなみに、俺の中じゃ通称魔王様。




なんで魔王なのかって、お察し通りの腹黒さ。

黒すぎるから、そろそろブラックホールって改名しても良いと思う。……ごめんなネーミングセンスなくて。



「はなびのこと好きでしょ? 椿」



「うんまあ好きだけど、」



「"恋愛感情"で大好きでしょ?」



っ、だからなんで言い換えるんだよ……!

恋愛感情、の付け足しはともかく、「好き」から「大好き」に変更する必要性はなかっただろ……!



「残念だったね、フラれて」



「フラれてねえよやめろ!」