とりあえず傷つけたわけではなさそうで、ほっとする。

だけどそれは、何の解決策にもならない。そう理解しているだけに、どうすればいいのかわからなくて、正解を選ぶことをためらってしまう。



そもそも、最初に甘えてすがろうとしたのはわたしの方。

拒むことは間違いなんじゃないか、とふざけたことを思ってしまうくらいには、情緒不安定だった。



「嫌?

俺、はなびのこと満足させられると思うけど」



「椿、」



「後悔させない自信ならあるけど、どうする?」



ずるい。拒めって言って、次はそうやってわたしに選ばせようとして。

どんどん許容してくれるから、本気で縋ってしまいたくなる。だって椿は、わたしが手を伸ばせばそれに見合うだけのものをくれるはずだから。



甘えて、縋って、どうしようもないところまでいってしまえばもう、どうでもよくなるんじゃないかって。

そんなことを考えてしまう自分が、嫌いだ。




「……つばき、」



「うん。どうしたい?」



「……わたしのこと、きらいに、なって」



ぽろっと、涙がこぼれる。

泣きたくないのに、涙ばっかりあふれてくる。



言いたいことは、全然伝わらない。

自分勝手なわたしの言いたいことが全部伝わってしまえば、きっと嫌われてしまうだろうけど。



「ご、めん。はなび。

頼むから、泣かないで。……ごめんな」



さっきまで甘い笑みを浮かべていたのに、途端に取り乱したように彼はわたしを抱きしめて、わたしを泣きやませようとなだめてくる。

きらいになって、と吐き出した言葉で逃げようとしたわたしを、彼はいつまでたっても逃してはくれない。