「つ、ばき……」



朝までそばにいてくれたノアは、「また来るから」とお昼前に帰っていった。

ひとりになった寝室で、どうすればいいのかわからなくなって。どっちも手放せないまま泣いて、芹に「ごめん」と一言だけ連絡を入れた。



それから電源を切ったけれど、ひとりでいれば必然的に涙があふれてしまう。

ノアは、いいよって言ってくれたのに。あの切なげな顔を見るたびに、「嘘だよ」って言いそうになった。



もぬけの殻みたいに呆然と過ごしていたら、いつの間にか時間は夕方。

椿が来てくれなかったら、それにすら気づけないほどで。



彼の言葉に、少なからずわたしは救われた。

……なのに、どう、して。



「抵抗、しねえの?」



熱っぽい視線で、見下ろされる。

それだけで自分の内側を焦がされるみたいに全身が熱くなるのに、外側から溶かされてるような気分になるのはどうしてなのか。




「だ、って、椿はそんなこと、」



「しない、って言い切れる?」



「っ……」



そんな顔、しないでよ。

ノアだけでいっぱいいっぱいなのに。そんな風にわたしのことを、惑わせようとしないで。──弱ってる今は、選択を間違いそうになるから。



「キス、するけど」



「や、だ、椿っ……」



思わず、顎を引いてそれを拒む。

それが本気の抵抗だったことに気づいてハッと顔を上げたけれど、椿の表情は傷ついているようには見えなかった。