きゃーっと走り寄ってきたのいちゃんは、ノアに抱きつくのかと思いきやわたしの脚に抱きついてくれて。
しゃがみこんで「こんにちは」と髪を撫でると、笑顔で同じように返してくれる。のいちゃんは、今日も完璧にかわいい。
「はなちゃんっ、」
「……のい。
はなちゃんに会えて嬉しいのはわかるけど、」
「ふふ、いいの。
熱烈にお出迎えしてもらえてうれしいもの」
幾度となく来ている上に、ここはわたしの第二の家みたいなところだ。
「のいちゃん奥行こうか」と声をかければ、わたしの手を引いて歩いてくれる。ノアはため息をついていたけど、文句は言わない。
「こんにちは、千秋さん。お邪魔します」
「ふふ、いらっしゃいはなびちゃん。
ごめんね今手が離せなくって、出迎えられなくて」
どうやら今まで電話中だったようで、千秋さんの言葉に首を横に振る。
お土産のドーナツを手渡していたら、のいちゃんが目をきらきらと輝かせた。
「のい、ドーナツはおやつの時間ね」
「はぁい」
甘いのいちゃんの返事を聞いて、手を引かれるがままにリビングのソファに座ると、隣にのいちゃんが座る。
それから絵本を差し出して、読んでほしいとわたしにおねだり。わたしよりも格段に甘え上手だ。
「……あーあ、のいにはなび取られちゃった」
「おかえりなさい。
ふふ、その割には楽しそうな顔してるじゃない」
千秋さんとノアの会話を聞きながら、絵本のページを開く。
わたしよりも遅れてリビングに入ってきたノアの左手薬指には、さっきまでなかったはずのシルバーのリングが嵌められていた。



