指先が、震える。

言った通り、はなびは保冷剤を目に当てたまま俺の話を聞いてる。だから彼女には俺のことが見えていないはずなのに、どうしてかはなびを見ることはできなかった。



「……俺が、」



4年間好きだったけど。

何度も何度も、"ノア先輩の彼女"であることを実感して、後悔してきたけど。未だに、はなびに告白するシチュエーションだけは想像できなかった。



……だって、そんなつもり、なかったから。

何度も振り向いて欲しいって思ったし、触れたくなったことだって幾度となくあるのに。一度も、自分で想いを告げようとは思わなかった。



「……俺がもし、2年前に。

芹と同じように、はなびに告白してたら、」



答えはまちがいなく「ごめんなさい」だったはず。

それをわかった上で、ただただ、ほんのわずかに俺が期待したいだけ。



自分勝手な、自己満足。




「俺と付き合う、とか。

そういうの、ちょっとは考えてくれた?」



……なんて、誤魔化してるけど。

勘がよければ、俺の気持ちなんてすぐにわかる。



「……椿、わたしのこと好きだったの?」



ほら。保冷剤を離したはなびがこっちを見るから、思わずそっちを見てしまったせいで視線が絡む。

ここで引いたら、間違いなく肯定でしかない。できるだけ自然に笑みを浮かべて「たとえ話」と口にした。



「……付き合ってたかもしれない、わね。

椿がもし、本当にわたしのことを好きでいてくれてたら」



「、」



「だって。

……普段遊んでる椿が本命にだけ言う"好き"は、誰から見ても特別なんだもの」