「お誕生日おめでとう、椿……!」



パンッ、と複数のクラッカーの弾ける音。

ガレージに入るなりぎゅうっと抱きつかれて、油断しきっていた俺はなんとかはなびを抱き留めた。危ない。



「ただいま、ぐらい言わせて。

……でも、ありがと。すっかり忘れてた」



俺の誕生日は1月。しかも2日。ある意味覚えやすくていいと思う。

生まれてくる弟か妹のことばっかり考えて忘れてたけど、はなびがこだわってたのはこれか。



熱烈に迎えてくれたはなびの頭をぽんぽんと撫でると、ふふっと嬉しそうに笑う。

それから差し出されたのは大きな紙袋で。



「みんなからたくさんプレゼントもらうだろうし……被るともったいないでしょ?

冬休み中だから女の子からはもらわないかな、と思って。大したものじゃないけど、手作りのお菓子、たくさん詰めたから」



「大丈夫、

何もらってもはなびのが一番嬉しい」




どさくさに紛れてはなびのことを軽く抱きしめてから解放すると、もう一度お礼を言って紙袋を受け取る。

そんな俺に呆れながら近寄ってきたのは珠紀で、「じゃあこれいらないの?」と薄い笑み。



「……それって」



メンズブランドの紙袋。

珠紀がそこから軽く引き出して見せたものはロゴの入った長方形の箱で、中身がなにかは、一瞬でわかった。……だってそれ。



「つーちゃん、

クリスマスに欲しいって言ってた財布だよー?」



「これ限定品だしなー」



両親にクリスマスプレゼントを買ってあげる、とは言われたものの。

そこそこの値段がするからと、結局ねだらなかった限定デザインの財布。目を見張る俺に珠紀はふっと笑って、「奮発するのは今年だけね」と紙袋を手渡した。



「俺と染と芹と穂から。

ほんとははなびも払ってくれるつもりだったらしいけど、そこはまあ俺らのプライド的な問題で除外ってことで」