ついさっきまでの威勢はどこへやら、ぼそっと答えるはなび。
「んじゃさっさとフラれてこい」って芹はケラケラ笑って、はなびの髪を乱すように頭を撫でていた。
「フラれてこいって酷い」
「いいじゃねーか。
クリスマスも俺たちと過ごせんだぞ」
「……それは楽しいだろうけど」
「だろ? 俺の優しさを有り難く受け取れ」
「染ー。今年のクリスマスケーキどれにする?」
「おいこら話聞け」
早々に話題変換して、はなびが染に駆け寄る。
チラシを家から持ってきたらしく、それを覗き込むふたりを見て、やっぱり幼なじみって仲良いなと思った。
「今年からザッハトルテもあるんだって」
「……ふ。これ食べたいんだろ?」
「……バレた?」
「遠慮しなくていいから好きなのにしろよ」
「んーでも、こっちのホワイトチョコレートとベリーのミックスが乗ったケーキも美味しそう……
染どっちがいい? ザッハトルテ甘いかな」
俺らのことなんかそっちのけで、普段通りの会話をするふたり。
染がはなびに向ける視線はいつだって優しくて。……それに焦れるなんて、きっとどうかしてる。



