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なんとなく染めたあの時のコバルトブルーのまま髪色を変えていないのは、はなびが似合うって言ってくれたからで。
女の子と遊ぶようになったきっかけは、はなびに好きな男ができたこと。
俺の世界は本当にはなび中心で、回っていた。
「……再婚?」
「ええ。
椿には報告が遅くなって悪いんだけど、」
──灼熱の太陽が照りつける、8月。
母さんに突如として切り出されたのは、再婚の話。だけどそれを聞いてあまり驚かなかったのは、すでに母さんに男がいるのを知っていたから。
「それでね、椿。
椿は年明けには、お兄ちゃんになります」
「……は、」
それよりも驚いたのは。
この話を切り出された時点で、母親が既に妊娠していたこと。妊娠してからかなり経ってたらしいけど、まだこの頃は見た目に変化がなかったから気づかなかった。
もうひとつ言うなら、母さんが妊娠してからも今まで通りだったからだ。
絶対、体調の悪い日だって多かったはずなのに。言ってくれたら、もっと気をつかえたのに。
「ごめん……全然気づかなくて」
「いいのよ。椿はまだ子どもなんだから」
「……俺、ちゃんと協力するから」
そう言えば、母さんは嬉しそうに笑って頭を撫でてくれて。
それから「名前一緒に考えようね」と、一言。
俺の名前が「椿」だから、それにあわせて花の名前にしたいらしい。
生まれるのは年が明けてから。性別は途中でわかるんだろうけど、俺には言わないで欲しいと伝えておいた。



