「あ、」



「……?」



「椿の大好きなはなびちゃんから電話だ」



「は……!?」



なんではなび……!?

っていうかまじで、いつの間にそんなに仲良くなってんだよ……!なんで連絡先とか交換してんだよこいつ……!



「おーい、椿くーん?

嘘だから現実もどってきてもらっていいー?」



羨ましい、いや、そうじゃねえけど、なんていうか俺の場合はなびから電話なんてかかってこないし……あれ、これ羨ましいのか。

なんて、安定に暴走をはじめかけていた俺の目の前で。




「うそ?」



まだ震えているスマホを、ひらひら振るシイ。連絡先に登録していない相手らしく、ケータイ番号が表示されてる。

眉間を寄せてそれを見るけど、何度か電話するのを躊躇って睨めっこした記憶のあるはなびの電話番号とは、違うような。



「うん、嘘。

全然関係のない女の子からの電話だよ。連絡先知ってるけど、あの子俺のこと嫌ってるっぽいから電話なんか掛けてくるわけないし」



「へえ。……ちょっと待て。

お前いまなんて言った?連絡先知って、」



「ねえ制服暑苦しいよー、飯行く前に着替えよー?」



「おいこらてめ、」



俺の上からぴょんっと飛び降りて、キャリーバッグを軽々片手に、洗面所に逃げ込むシイ。

普段なら追いかけられただろうに、わざと弾みをつけてシイが飛んだせいで、ぐっと体重がかかって起きられなかった。