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今思えば変な話だけど、俺らが小さい頃、『花舞ゆ』には小学生の出入りする日があった。
なんでも新しいチームメイトを増やすために、自分の仲の良い年下を連れてくる、という先代の伝統を、すこし引きずっていたからで。
俺がはなびと出会ったのは、小6のとき。
兄弟はいなかったけど、俺は近所に年上が多くて可愛がってもらってたから、自然とその場所に連れて行ってもらうようになって。
小5の終わり、その当時トップだった人が連れてきた小学生が、染だった。
──ああこれがカリスマ性なのか、と。
まだ幼いながらにそう思ったのを、今も覚えてる。
整った容姿に、大人びた性格と。わりかし白黒はっきりつけるタイプで、だけど人に嫌われることは少なく、おまけに人を惹きつける。
「……トップが連れてきてんだし、中学入った時にはメンバーになるの確定だよな。
っつーか、まじで俺あいつ年下だと思えねーんだけど」
「なんか、次元が違うよな」
すこし年上の中学生がそう話しているのを、何度か聞いた。
年上を惑わせるほどのカリスマ性を持つ染は、いつも誰かに囲まれてて。
俺は初対面からしばらくたっても、一度も話したことはなかったけど。
「お前、足大丈夫か?」
これが、染にかけられた第一声。
当時小学生が出入りする日は大抵、小中学生の体力勝負の遊びみたいなものが多くて。染はほとんど参加することなく、傍観者に徹してたけど。
俺は運動は好きな方だから、割と参加する側で。
この日は元々なんのパーツだったのかわからない丸い輪をゴールに見立てたバスケットボールをして、遊んでいた。
いつも通り調子よく遊んでたけど、途中でうっかり、足を捻ってしまって。
ちょっと休憩するという名目で、交代してきたところだった。
「あー……気にするほどじゃ、ねえと思う」
あ、やべえなって思ったから抜けてきたけど。
歩けないわけじゃないし、むしろ染以外の誰も、気づいてないと思う。



