「ふぁ、」



ねむ……、と。

まだ完全に覚醒しきっていない状態で、なんとか身体を起こす。スプリングを軽く軋ませて、まだ眠っているすみれを起こさないようにしながらベッドを出た。



残念ながら、俺は早起きが得意ではないのだ。

毎朝学校に行くときは母親に伝達を受けたすみれが「おにーちゃん起きてー」と起こしに来てくれるし、こうやって隣でまだ寝てるのはめずらしい。



それもそうだ、現時刻4時半。

あきらかに起床時間ではないそれに俺が起きているのも、ほかでもない修学旅行のせいだった。



「……だっる」



ぱっと目がさめるならまだしも、身体に怠さを伴う目覚め。

思わずその怠さに舌打ちしたくなりながらクローゼットを開けて、アイロンのあてられたカッターシャツをハンガーから外す。



俺の学校は、始業時間がちょっと遅めだし。

今日は起きたからいいとしても、明日明後日、明明後日……と宿泊で早起きする必要があるのは憂鬱でしかない。




……はなびが同じ学校だったら、ちょっとは、楽しいのに。

はやく会いたいな、と。恋人でもなんでもない彼女を想っているうちに、すっかり目が覚めた。



制服に着替え終えて、ドアノブに手をかける。

そのタイミングで「おにいちゃん」と甘い声に名前を呼ばれて、振り返った。



「……ごめん、すみれ。起こした?」



「んーん……おみおくり、するの」



「ああ、」



数日会えないのは寂しいから見送るって、昨日言ってたもんな。

大袈裟、と笑ったけど、どうやら本気だったらしい。



まだ寝てていいよと言ったものの、俺とは違い寝起きの良いすみれは、ぴょんと起き上がって。

「おはよぉー」と笑顔を見せてくれたのが可愛くて、彼女を抱き上げて部屋を出る。