「俺ね、椿のこと好きなんだよね」
「はあ……」
「あ、言っとくけど恋愛対象としてだよ」
「え!?」
あんなに楽しそうに女の子と歩いてたのに!?
女の子に軽いって言ってたけど、本当はそうじゃないの!?
まさかのカミングアウトに、目を見張って。
椿の本命ってまさかとは思うけどこの人なんじゃ、なんて余計なことまで考え始めたタイミングで。目の前の彼は、からからと笑った。
「冗談に決まってんじゃん。
俺の恋愛対象は女の子。椿のことはたしかに好きだけど、あいつのこと友だちとしか思ってないよ。あーあ、椿に「気持ち悪い」って怒られそう」
……なん、だろう。
やっぱりこの人、わたしに対して何かと悪意を向けているような気がしてならない。だってどう考えても、今のは嫌がらせだとしか思えないもの。
「俺が本気で椿のこと好きだったら焦った?」
「……べつ、に。
おどろきはしますけど、否定はしませんよ」
「そ。……そういえば。
ひとつ聞きたかったんだけど、どうしてノアさんなの?」
どうして、というのは、どうして付き合ってるの、という問いかけなんだろう。
ノアだってかっこいいけど、『花舞ゆ』のみんなだってそれに負けず劣らず。なのにどうして、ノアなのか、なんて。
「好きだから。……それだけでしょう」
正直に教えてなんか、あげないけど。



