「まま……!」



感情を、呑み込んで。

泣いてしまったことを謝れば、彼女はふるふると首を横に振って、「ごめんね」とわたしの頭を撫でてくれた。



子ども扱いみたいなそれにも小さく笑って、お迎えに行くと言った千秋さんと一緒に、家を出てきた。

彼女と向かった先は、保育園。到着すれば可愛らしい女の子が、たたたとわたしたちの方まで駆け寄ってきて、千秋さんに抱きついた。



「ほら、のい。

はなびちゃんも、一緒に来てくれたのよ」



その声で顔を上げた彼女が、大きな瞳でわたしを見上げる。

くすりと笑ってしゃがみこみ、視線を合わせれば「はなちゃ…っ…!」と抱きついてくれた。どうやら、わたしの名前を覚えてくれているらしい。



「ふふ。のいちゃん、前よりおっきくなったね」



すこし前に会ったときはまだ、言葉も話せるようになったばかりで。

ようやく千秋さんのことを「まま」と呼べるくらいだったのに。




それに、明らかに身長も伸びてる。

頭を撫でてあげたらそれが嬉しかったようで、満面の笑みを向けてくれた。



「はなびちゃん、ちょっと先生と話してくるから、のいのことお願いしてもいいかな?」



「あ、はい。待ってますね」



その場を離れていく千秋さんを見ていたら、つんつんと服を引かれて。

彼女に視線を向けると、「だっこ」とおねだりされた。



「うん、おいで」



抱きついたままだった彼女を抱え込んで、立ち上がる。

きゃっきゃとはしゃぐその姿に、ふっと頰が緩む。



椿にも妹がいるけど、こんな風にかわいいんだったら、お嫁に出したくない気持ちはわからなくもない。

のいちゃんはまだ2歳だけど、確実に間宮家の血を色濃く継いでいると思う。