可愛いキミは、僕だけの××





先輩がいる方向を見ないように、そっと目を逸らす。

早く通り過ぎて、と頭の中で念じた。


キュッ、キュッと上履きが擦れる音と女の先輩の猫なで声がだんだん近付いてくる。



目を瞑りながら静かに待っていると、落ち着いたバリトンボイスが耳に響いた。




「……お、君は希ちゃんじゃないか」


この印象的な低いイケボはよく知っている声だ。



目を開けて前を見ると、目の前に1人の男子生徒が立っている。

その人は秋元先輩と同じく、高身長でスタイルがいいから目立ちやすい。

もうね、そこにいるだけで注目を浴びるんだよ。
まるで芸能人みたいに!



「それと、仁の彼女か」


「荻野先輩、こんにちは!」


こはちゃんがぺこっと頭を軽く下げる。


私たちに話しかけて来た人の名前は、荻野大和(おぎの やまと)先輩。


私がバイトをしている喫茶店Luna(ルナ)のよく来てくれてる常連さんで、何度かお話ししたことがあるの。


その時に聞いたんだけど、父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフなんだって!何となくそんな気がした。

優しげでミステリアスな雰囲気と、高校生には見えないほどの大人っぽさを兼ね揃えた人だと思う。


現に今だって、周りの女子からの視線が凄いよ。