「おい秋元、手加減してやれよ?
この子は汚れを知らない、ピュアな女の子なんだから」
「いや、手加減も遠慮もやめた。
本人はまったく気付かないし、全力でいかせてもらう」
「おい蓮……」
「ヒェ〜〜!!蓮夜くんこわ〜い!!」
3人が私を置いて盛り上がっている。
結局、せんぱいの悩みは解決したのかな?
「蓮夜く〜〜ん、一緒に帰ろっ!」
ぼーっとしていたら、遠くから聞こえる猫なで声ではっと我に返った。
派手な女の先輩が語尾にハートを付けながら、せんぱい達に近付いてくる。
さっきは、せんぱいに強引にいけと言っておいて自分にはそんな勇気があるわけもなく。
女の先輩に睨まれる前に、早く離れよう。
「じゃあ、私はこれで失礼します」
「あぁ、呼び止めてごめんね四葉さん」
「希ちゃんまったね〜!」
ぺこっと頭を下げて背中を向けたその時。
「また明日、希」
――――空耳かと思った。
バッと後ろを向くと、秋元せんぱいが私に向かって優しく微笑んでいた。
まるで、恋人に向けているような甘い顔。
驚きのあまり、口をパクパクさせるだけで言葉が出ない私を見て、やっぱり彼が吹き出す。
顔がじわじわと赤くなる。
どうしていいか分からなくなり、逃げるという手段を選び全力で駆け出した。
き、急になんなの!!?
背後から戸梶先輩の蓮夜くんえげつな〜〜い!!!という茶化すような声が聞こえたが、もちろん振り返る余裕など私にはない。
……最近のせんぱいは、変だよ。
どうしても手に入れたいものって、まさか私?
そんな訳ないのに、自惚れてしまうほど
心を乱されていた。