可愛いキミは、僕だけの××



恐ろしく整っているけど、とっても怖い顔を私に近付ける。


つい数秒前まで、ときめいていたはずが恥ずかしさと恐怖で頭が真っ白になり、黙り込んでしまう。

おかしいな、お姫様抱っこってドキドキするシチュエーションなはずなのに今はただただ怖い。


なんか誤解してるみたいだけど、
とせんぱいが続いた。



「俺は彼女なんていないよ」

「えっ、じゃあいつも一緒にいる女の先輩は……」

「あいつは勝手に彼女面してベタベタしてくるだけ。女じゃなかったら本気で殴ろうかと思うくらい、鬱陶しいしムカついてる」



せんぱいが見せた心底うんざりした表情から察するに、どうやら本当にみたい。


あんな超絶美人に言い寄られても、
この人はなんとも思わないの?

だったら、私はもっと無理だね。
あはは……余計に悲しくなってきた。


せんぱいの腕の力がこもり、
至近距離で見るにはあまりにもキケンな美しい顔がゆっくりと迫る。





「誤解しないで」





私の耳元で低く甘く囁き、
せんぱいの額に私のそれがくっ付いた。


……これ以上は耐えられない!!

吐息が、口に触れそうな瞬間ーーー
ハッと我に返った。



「わっっ、わかりました!!」

「ほんとに?」

「わかりました!
わかりましたから、離れましょう!?」



私があまりにも必死にお願いするので、彼の腕の力が緩まった。

その隙を狙い、せんぱいの腕から抜け出すことに成功。


「帰ります!!」


そのまま逃げるように走り出した。


後ろから「ちょ、待って!」という声が聞こえたけど無視して全力疾走する。



最近のせんぱいはおかしいよ!



最近やたら近いし、なんか雰囲気とか言葉が甘ったるい。別人みたいだ。

勘違いしそうになるからやめてほしい。



顔の熱、収まって〜〜!



瞳先輩とこはちゃんの元へ向かいながら、どうにか顔の熱を下げようとしても、一向に下がらなかった。




……せんぱい、彼女いないんだ。



私にもまだ僅かな可能性があるって事が分かって、嬉しいな。


若干ニヤけながら砂浜を走っている私を子供が不思議な顔をして見ているのは気にしない気にしない!