その場を去ろうとした時。
「待って」
せんぱいにぐいっと腕を引かれ、
そのまま抱きしめられる。
周りの女の子達から、すぐにきゃあっ!と悲鳴が上がった。
な、なんでたくさん人がいる前で急に!?
何度か包まれたことのある体温にドキドキして、顔を赤くせずにはいられない。
今回は海にいるからか、せんぱいの体が濡れているのが分かる。
背中がじわり、と濡れるのを感じた。
私の頬にせんぱいの髪から垂れた水滴がついて、反射的に「冷たっ」と言うと彼がバッ!と離れて行った。
頬についた水滴をぬぐいながら、私は後ろを向けずにいた。
……せんぱいがあんなことするから、めちゃくちゃ注目されて恥ずかしいよ。
私の前にいる瞳先輩が呆れた顔で、こはちゃんが少し赤い顔で私の後ろを見ていた。
「あら蓮夜くん、そんなに急いでどうしたの?」
「瞳お前、なんで声をかけないんだよ」
「あんな集団の中、声なんてかけらんないわよ」
それに、邪魔しちゃ悪いかと思ってね。
瞳先輩が若干せんぱいを睨みながら言うと、彼が黙った。


