可愛いキミは、僕だけの××




絶妙なタイミングで、アナウンスが響いた。


確かせんぱいはリレーに出場するはず。



「あ、あの、リレー呼ばれてますよ」


そう言って、せんぱいの逞しい身体をグイグイ押し返そうとしたけど微動だにしない。

えっ、ビクともしない!

私の力が弱いのか、この人の体幹が強いのか……どっちもだろうね。



「僕がリレーに出ること知ってたんだ?」



そりゃあ、うちのクラスの女子がアンカーだって興奮気味に喋ってたから知ってますよ。


学年対抗リレーは、毎年1番盛り上がる競技だ。

1年から2年、2年から3年へとバトンを渡す。


運動部だけじゃなく、文化部の生徒も参加するから最後まで勝ち負けが分からないのが面白いと思う。


今年は紅組のアンカーが荻野先輩、
白組のアンカーが秋元先輩。


女子達の間でどちらを応援するか、
という話題で持ちきりだったなぁ。



「四葉さんは、紅組を応援するの?」

「はい、同じチームですから……」


「……みてて、」

「え?」




………俺のこと、見てて。

できれば他の男は見ないで。

それと、密かに応援してくれたら嬉しい。


耳元で甘すぎるボイスを囁いてから立ち上がり、そのまま振り向かずに教室を出て行った。


囁かれた耳が熱い。