可愛いキミは、僕だけの××





「身体のことってなに………まさか、妊娠でもした?」



せんぱいは今まで聞いたことのないくらい低く、恐ろしい声を発した。

めちゃくちゃ怖かったけど、
それより妊娠という単語に目を丸くする。

いやいや!私、まだ高校生だよ?
もし本当だとしたら大問題になる。



「ちっ、違いますよ!」


「じゃあ何?」

「そ、それはその……」


「ほら、やっぱり妊娠関係でしょ。相手は誰だ?」



何回否定してもせんぱいは聞く耳を持たないし、ドス黒いオーラを纏ったまま。

相手もいないのになぜか疑われてるのは、さすがに納得できない。


「本当に、妊娠なんてしてません!」


「どうだか。大きく否定する辺り怪しいな」

「私、まだそういう行為自体したことありませんから!!」



……はっ!


予想以上に大きな声が出て、
波を打ったように静寂が訪れる。

先輩はぽかんとした表情でこちらを見ているのに対して、私は恥ずかしくて目を逸らした。


ああ、もう最悪!

よりにもよって、好きな人にこんなことを暴露しちゃうなんて。


両手で顔を抑え、しゃがみこむ。


沈黙が痛い……穴があったら今すぐに入りたいよ。



目から自然と涙が浮かんだ。

すると、身体がふわっとせんぱいの匂いに包まれる。


背中を優しく叩かれた後、頭を撫でられたらなんだか恥ずかしいという思いが消えていく気がした。




「……ごめんな、無神経で」

「い、いえ……」



それより、抱きしめられたりしたら……バクバクと音を立ててる心臓の音が聞こえちゃう!





『学年対抗リレーに出場する選手は、入場門までお越しください』