湯浴みを終え、鏡台前で髪にブラシを通す侍女のマリーに聞いた。

「ねぇ、ノーラをどう思う?」

 すると、マリーは苦虫を噛み潰したような顔で答える。

「ユリシス殿はアリッサ様の婿になられる方だというのに、まさか女連れの無礼を働くとは。 私には到底理解できませんわ」

「お父様も相当、怒っていらっしゃったわね」

「当然です。 陛下が処罰なさらなかったのは、アリッサ様のお気持ちを考えたからですし」

「まぁ、ね。 サウスマルケリアとの関係を考えても仕方ないもの」

「それにしても……」

 そこで、自室のドアがノックされた。

 もう寝間着に着替え、寝入りの準備をしようとしているところなのに。

「誰かしら」

 マリーが応じると、ドアの前にいたのはまさかのユリシス。

「こんな夜分に申し訳ありません。 どうしても二人きりで王女様とお話したく、伺わせて頂きました」

 ますますマリーの形相が難しく、嫌悪を深めていく。

 本当は私も話がしてみたいと思っていた。
 はしたない格好にならないように寝間着の上にガウンを羽織り、マリーに彼を通すように指示して下がらせた。