恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~

「綾瀬川にずっと嫉妬してた。笑美にその気はなくても、会社の行き帰り限定でアイツが傍にいることや、昨日のことも。笑美をひとりじめしたくて、好物を作って家に招いて、あわよくば一晩過ごして、自分のものにしようとしてた」

「…………」

 俊哉さんはまぶたを伏せて、私に向けた視線を逸らす。まるで自分の気持ちを隠すように視線を逸らされてしまったせいで、私自身どうすればいいのかわからなくなった。

(自分のものにしたいって言ってるのに、見えない壁をこうして作られてしまったら、私は言葉すらかけられないよ)

「だけど一緒にここで過ごしているうちに、笑美の様子がらしくない感じになってるのを目の当たりにしたら、それまでの計画がどうでも良くなってしまったんだ」

 一気にまくし立てるなり、残っていたビールを全部飲み干す。私は一口だけオレンジジュースを飲んでから、目の前のテーブルに置いた。

「俊哉さんは優しすぎます」

 呟くように言って両目をぎゅっとつぶり、俊哉さんの胸の中に思いきって飛び込んだ。俊哉さんが持ってるコップの中身がなにもない状態だからこそ、どんなに勢いをつけても大丈夫なことに安心して、ぎゅっと縋りつく。

「笑美っ!」

 裸の胸に頬を寄せる。耳に聞こえる俊哉さんの鼓動はすごく早くて、私も同じようにドキドキしていた。

「笑美、あの……」

「俊哉さんが優しいのはわかってますけど、今くらいはワガママになっていいですよ」

「俺は充分にワガママだろ。あのさ、その格好をさせたのは俺だけど、そろそろ離れないと手を出すかもしれないぞ」

 持っていたコップをテーブルに置いた俊哉さんは、私の肩に両手をかける。体から離そうと力を入れるので、それに抗うべくバスローブを掴んで離れないことをアピールした。

「どうぞ手を出してください。絶好のチャンスを逃すんですか?」

「でも……」

 俊哉さんは困った感じで言葉を飲み込む。それと同時に、両肩に触れている手の力がなくなったのがわかった。抗っていた私も力を抜いて、大きな体にしなだれかかる。

「俊哉さんの優しさがもどかしいです」

 真っ白いバスローブをぐいっと強く引っ張って、精一杯顔をあげた。それに導かれるように、俊哉さんの顔が近づきそして――。

 口移ししたときよりも、熱い口づけをかわすことができた。

「ンンっ……」

 むさぼる感じでなされるキスに、どんどん呼吸が乱されていく。熱を帯びた俊哉さんの舌遣いだけで、どうにかなってしまいそうで、縋るように俊哉さんの首に両腕を巻きつけようとして、それに気がついた。

(いつの間に、シャツのボタンを外したんだろ。全然気がつかなかった……)