恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~

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 次の日、澄司さんが朝から自宅前で私を出待ちしていた。愛車の前に佇み、眩しさを感じさせる笑顔を頬に滲ませる。彼に好意を抱いている女のコなら、間違いなく心臓を撃ち抜かれる微笑みだろうな。

「おはようございます、笑美さん!」

「お、おはようございます……」

(――どうして私の出勤時間がわかるんだろ。怖い!)

「さ、どうぞ。会社までお送りします」

 シックなグレー色の車の助手席のドアを開けて、乗るように促されてしまった。

「わざわざすみません。早く会社につきすぎてもなんですから、電車で行きたいんですけど」

「じゃあ間をとって、降りる駅までお送りするのはどうですか?」

 澄司さんは私の肩に腕を回し、強引に助手席に座らせる。有無を言わさないその行為が迷惑なことを示すべく、上目遣いで睨んでみせた。

「澄司さん……」

「かわいい顔で怒らないでください。それにご自宅前で30分ほど待った、僕の頑張りを無にしてほしくないです」

 狭い車内なのに至近距離で顔を寄せられると、どこにも逃げ場はない。身の危険をひしひしと感じたせいで、言いたくないセリフを口にしなければならなかった。

「……わかりました。それでよろしくお願いします」

 仕方なく澄司さんに了承したら、近づいていた真顔が満面の笑みになり、私の機嫌を取るように頬を人差し指で突っつく。

「ありがとうございます!」

 こうして朝からげんなりすることがあったせいで、職場に到着してもいつもどおりに過ごせず、気落ちしながら自分の席につく。目に飛び込んだのは、裏返しにされた見たことのあるメモ紙で、すぐさまそれに反応し、勇んでひっくり返した。

 佐々木先輩が走り書きした内容は、午前中は不在ということと、人目のつく社内で接触しないように、千田課長に注意されたことが書いてあった。

 仕方なく仕事に集中しながら朝のイライラや、佐々木先輩がいない寂しさを消化したのだった。