愛し子だと分かった翌日、私達は新しい家庭教師を紹介されていた。

 「お初目にかかります。本日から御二人に魔法を
 お教えさせていただくことになりました、王宮魔
 術師アルフェルド=リスターと申します」

 アルフェルド様は肩まである若草色の髪をゆるくひとつにまとめていて、優しげに細められた垂れ目は同じく若草色で、美少年に見える青年である。
 お母様曰く、年は今年で21歳になるらしい。え、嘘でしょ!どう見たって15,6、上に見ても18にしか見えない。
 
 何故お母様が知っているのかというと、アルフェルド様はお母様の従姉弟だから。けれど、アルフェルド様は生まれも育ちも此処、ディアマンテ王国らしい。


 「ザライド=リーノ=エルドラードです」

 「アンジュ=リーノ=エルドラードです」

 「「アルフェルド様、よろしくお願いします」」

 
 「はい、頑張りましょうね……さてと、堅苦しい
 のはここまでにしようか」
 
 僕のことはアルって呼んで、そう言いアルフェルド様はニコニコ笑っている。

 突然の変貌に兄様と私は少し狼狽えてしまった。

 「あ、あの…?」

 「ザライドとアンジュって呼んでいいかな?」

 「「えっ、は、はい…」」

 「良かった。そういえば聞いてるよね、僕が君達
 のお母様─アリスの従姉弟だって」

 「「はい、聞いています」」

 「うん、だからさ、堅苦しいのはやめにしないか
 な?」

 その方が楽でしょ、と言い放つ。

 確かに楽だけれど…

 「しかし、王宮魔術師様にそんなことは…」

 「いやいや、君達の方が上だからね。まずはエル
 ドラード公爵家の子息令嬢でしょ、更にレクイエ
 ム帝国の王位継承権を持つ王子王女でもあって、
 愛し子、それも歴代でもかなり妖精と精霊に好か
 れている」

 …あ、本当だ。
 じゃ、じゃあ、いいかな?

 兄様に目を向けると、兄様もこちらに目を向けていた。
 視線を交わし、頷きあう。

 「……分かり…じゃなくて、分かった」

 「でも、授業中は教師と生徒としてわきまえさせ
 てもらいます」

 「うん、それがいいかもね」

 じゃあ、改めてよろしくね、アルフェルド様─もとい、アルの言葉に私達も笑顔で答えた。

 「「うん、よろしく(よろしくお願いします)」」