「ちょっとだけ。ニュアンスが違う、かな?」

「え?」

「あたしは……。あたしが関わることで、"そうなる未来を回避"しているの。詳細に()えた行動になぞらえて動くことで、重症化もしくは死ぬような事故や事件を未然に防いでいるの」

 ツイと上げた紗里の目を見つめ、暫し無言でいた。綺麗なグレーの瞳は真摯に僕を捕らえ、離さない。

 僕は今の言葉をひとことひとこと噛み砕くように考えた。

 "行動が視える"……?

 つまり、単純に未来が分かるんじゃなくて、どんな行動を起こすかを視せられ、そもそもの未来も視える、……そういうことだろうか?

「右目で視えた未来を変えるために、忠実に動くのがあたしの役目なの」

 そう紗里は続け、寂しそうに微笑んだ。

 ***