さっき数人が怪我をしたって言っていたけど、あいつは大丈夫だったのかな?

 ローテーブルに置いた黒いスマホを持ち上げ、慌てて誠に電話をかけた。

 数回のコール音を数えたあと、『もしもし?』と応答があった。

「っあ、誠か!? 俺、今ちょうどニュース見て、通り魔のこと知って」

『ああ、そうなんだ。もうニュースで放送されてんだな。いやぁ、参ったよ!』

 比較的明るい彼独特の口調を聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。

「誠は大丈夫だったのか、それが気になって電話したんだけど……大丈夫みたい、だな?」

『……おう。まぁ、死ぬような怪我じゃないからな』

 っえ。

「怪我したのか!? もしかして今病院??」

『……いや。さっき親に迎えに来てもらって帰ってきたとこ。足をちょこっと切られたから数針縫ったんだけどさ。なんて言うか……俺当分走れそうにないわ』

「……え」

 じゃあな、と明るく続け、電話は一方的に切れた。

 怪我の具合はどの程度なのか分からないが、誠は大分落ち込んでいた。

 声は明るく聞こえたが、空元気なのはその雰囲気で伝わった。

「……恭ちゃん。友田くん、怪我したの?」

 紗里の問い掛けに反応できず、僕はスマホを掴んだまま暫く何も言えなかった。


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