「前に運転手付きでリムジンで学校まで送ったら怒っただろう?だから今日は、俺が運転する」

「……いや、リムジンじゃなくてもこんな高いスポーツカーでも一緒です!」

お金持ちの人間が通う学校ならば、高級車で送ってもらうのは普通だろう。しかし、一般人の瑠愛にとっては高級車などテレビで見かける程度だ。学校中から騒がれ、友達から質問攻めになる。

「私、歩いて行きますのでーーー」

瑠愛が秀一の横を通り過ぎようとすると、その腕を強く掴まれる。振り返ると、秀一はニコニコと笑みを浮かべていた。でも、その瞳に光は宿っていない。

「乗っていくだろ?」

その圧力に逆らおうものなら、一体何をされるのか。想像するだけで恐ろしい。瑠愛は何度も首を縦に振り、嬉しそうな顔をする秀一にエスコートされながら車に乗った。



そもそも、何故瑠愛が秀一に好かれてしまったのか、それはほんの二ヶ月ほど前のことだ。瑠愛が道に迷って困っていた秀一を助けたのがきっかけである。

「ありがとう。君のおかげで助かった」