HASEGAWA本社ビルは8階建ての自社ビルで、最上階が役員フロアになっている。

常務に呼び出された私は、仕事に戻るため広報のある6階に向かった。

スマートフォンを取り出すと、メッセージが入っていた。

『なんかあった?』

あれ? 私、そんなに動揺してたんだ。

『異動。常務秘書だって。
来週から引き継ぎに入るみたい』

『おめでとう!
泉は優秀だからな。
さすがは俺の妹だ』

『兄バカだよ。
結構プレッシャー。
まだ1年目だよ?
こんなに早く異動になると思わなかった。
私に務まるのかな……』

『大丈夫だ。
あの父さんだって、HASEGAWAで秘書をしてた時代があるんだぞ? 
泉の方がよっぽど気が利くよ』

『もう!
お父さんに怒られるよ〜?』

『内緒だ。
頑張れよ!』

『うん。頑張る。
あ、今休憩中なの?』

『あと5分で交替。
今から歯磨き』

『そっか。
じゃあ午後も頑張ろう!』

すると、“はーい”という『双子戦士モーニングスターズ』のシンが、二パッと笑って手を振っているスタンプが送られてきた。

フフフ、真そのものだ。