「母さん、イズミのフィギュア貸してやるよ。それで我慢して。泉は貸せないから」

おっと……そう来たか……。

「いらないわよ!
私はフィギュアに興味はないの。
本物の泉ちゃんじゃないと一緒に飲めないじゃない。
あ、ワインでいい? 」

「美央、乾杯用にシャンパンを用意してるぞ。
京、開けてくれ」

おじ様がテラスから京に指示を出した。
この家族、かなりの酒豪なんだよね。
私も飲める方だけど、調子に乗って潰れないようにしないとね。

「今日は飲みましょ!
愛には泊まらせるって言ってあるから。
はなれに着替えあるんでしょう? 」

「は、はい……」

あるけどね…。
一応、出勤用のスーツの用意もある。
母親同士が親友って言うのもなんだか……。
全部筒抜けじゃない。

それからシャンパンを開け、乾杯し、美味しいお肉をたくさんいただいた。

ヒマラヤの岩塩だけで食べられるくらい、上等なA5ランクの神戸牛。
さつまいもはほっくほくだし、マッシュルームのアヒージョも最高! 
なんて幸せな休日なんだろう。

おば様が少し冷えたピノ・ノワールを飲み始めた頃、小さな赤い箱を取り出した。
よく見ると、知らない人はいないくらい、有名なジュエリーショップの箱だ。

「これね、私がいっくんと婚約した時のリングなの。正確にはペアリング。
泉ちゃんさえ良ければ貰ってくれないかな? 」

「えぇ!? そんな大切なもの……」

「大切なの。だからよ」

「……おば様……」