(仮)愛人契約はじめました

「俺が言いたかったのは、蓮形寺家で辛いことがあったかもしれないが。
 今のお前にはもう関係ないと言うことだ」

「え?」

「お前が何者だろうと関係ない。
 今のお前は、ただの俺の愛人」

 『蓮形寺の娘』じゃない、と蓮太郎は言う。

「お前が捨てたいなら過去も家族も置いてこい。
 俺がずっと面倒見てやる。

 なりたくもない経営者か、好きなことができる研究者か。
 俺の将来を決める、大事な愛人様だからな」

 なんだかロクでもないことを言われているような。

 すごいことを言われているような……。

 だが、ともかく、なんだか身軽になった気がした。

 ふっと肩の力が抜けたというか。

 アパートに越してきたときよりも、蓮形寺の家から自由になれた気がした。

「あ、ありがとうございますっ」

 いや、一生、愛人として雇おうと言っているだけなので、礼を言うべきところかはわからないのだが。