(仮)愛人契約はじめました

「電話をしようかな、と思いながら歩いていたら、お前のアパートに着いたんだ、奇跡だ」

「いや、此処、来たことありますよね?」

 なにも奇跡じゃないのでは?
と唯由は言ったのだが。

「いや、奇跡だ。
 俺は極度の方向音痴なんだ。

 お前のもとにたどり着けたのは運命だ」
と蓮太郎は主張する。

 あのー、と唯由は遠慮がちに訊いてみた。

「今日、たまたまバッタリ出会わなかったら、どうなってたんでしょう?
 もういいやで終わりだったんですかね?」

 どうもなにもかもが偶然と運任せな気がして。

 困っていると言ったわりには、そんなに必要とされてないような。

 じゃあ、別に、私、愛人やらなくていいんじゃないですか?
と思いながら訊いてみたのだが。