俺は今、猫に蓮形寺を盗られている……。

 遊びに来たというのに、蓮形寺は俺の方を見もせずに、猫を激写し続けている。

 旅行中、俺がコマ送りみたいに蓮形寺を撮ってたみたいに、蓮形寺は猫を連写している。

 ……蓮形寺。
 俺もコマ送りに撮ってくれ、と蓮太郎が思ったとき、唯由がこちらを振り向いた。

 ようやくこっちを向いてくれたっ、と喜んだ蓮太郎に、唯由は猫を抱き抱えさせる。

「はい、窓辺に立ってください」

 唯由は猫を連写した。

「ありがとうございます」
と唯由が猫を下ろすと、猫は扉の方に向かい、歩いていってしまう。

「お茶です」
とやってきた直哉の足下に擦り寄っていた。

 いつも美味しいものをくれるからだろう。

 それをまた唯由は写真に撮り、満足げにスマホを見ていた。