(仮)愛人契約はじめました




 やがて、今度の旅行の話になる。

「なんか緊張しちゃってるんですよね、今から。
 気まずい感じの旅行になっちゃったりしませんかね?」

「あんた意外と大胆ね。
 それ、月子の見合い相手なんでしょう?

 なに私に相談してんのよ」

 いや、結局してないじゃないですか、見合い……と思ったとき、虹子が言った。

「あんた、月子に似て可愛いんだから。
 ちょっと甘えたら、男はイチコロよ」

「そんなもんですかね?」

「旅行中、少しくらい揉めたとしても、素直に自分の気持ちを言えばいいのよ。
 マイナスな気持ちじゃなくて、その人を好きだって気持ちをね」

 湯呑みを手にしたたま、遠い目をする虹子に訊いてみた。

「お義母さんは、いつもそんな風にできてたんですか?」

 すると、虹子はこちらを振り向き、ちょっと喧嘩腰に言ってくる。

「できなかったから、あなたがこの世にいるんじゃないの」

 笑ってはいけないのだろうが、ちょっと笑ってしまった。

 ふくれてそう言う虹子が少女のように可愛いらしく見えて。