(仮)愛人契約はじめました




 小ホールは二階なので、エレベーターには乗らずに階段で下りた。

 少し先を歩く蓮太郎が、お前は上に戻るんじゃないのかという顔で振り向いたが、唯由は、

 いやいや、自動販売機にジュース買いに行くんですよ、という顔をする。

 いや、それで通じていたかはわからないのだが、蓮太郎は自分のあとをついてくる唯由に不思議そうな顔をしながらも、問い詰めてはこなかった。

 ただ、
「どうした。
 元気がないな」
と訊いてくる。

 いえ、で済まそうかな、と思ったが。

 この下僕、なんだかんだで、王様にちゃんと仕えているので、たまには愚痴ってもいいかなと思い、言ってみた。

「さっき、ちょっと思ったんですよね。
 王様ゲームのとき、雪村さんが違う番号言ってたら、今、雪村さんといるの、違う人だったんだろうなって」

 だが、蓮太郎は前を向いたまま言ってくる。

「莫迦め」

 お前以外の誰が、愛人になれとかいう提案を受けるんだ、とか言うんだろうな、と思っていた。

 だが、蓮太郎は、
「お前だから言ったんだ」
と言う。