(仮)愛人契約はじめました

 そこで、蓮太郎が言う。

「許嫁とかではない。
 俺の見合い相手は、こいつの妹だし」

 雪村さんっ、『愛人』という言葉を出さなかったのは偉いですけどっ。
 チョイスするワードをいろいろ間違ってますっ。

「ええっ?
 じゃあ、略奪愛ですかっ?」
と他の看護師さんたちも身を乗り出してきた。

 いやいや。
 愛人で下僕な私が、ご主人様を見合いにより略奪されるところだったんで、どちらかと言えば、逆なんですけど、
と唯由は思っていたが、話がややこしくなりそうだったので、黙っていた。

 弁当箱を片付けながら、早月が言う。

「そんな器用なこと、唯由にはできないわよ。
 私の娘ですものね。

 ……我々はいつも、略奪され、搾取(さくしゅ)される側……」

 搾取はされてませんっ。

 どす黒い話題になりそうな気配に、みんな青くなる。

「さ、さあ、お昼からも頑張りますか~」
と言いながら潔子が弁当を片付け、紗江が珍しく怯えたように、

「じゃあ、戻って仕事するよ~」
と言って立ち上がっていた。