(仮)愛人契約はじめました

 


 採血が昼をまたぐので、早月たちには仕出し弁当が出た。

 健康診断を取り仕切る人事の部長が、
「お母さんが来てらっしゃるのなら、ここで一緒に食べたらどうだね」
と言ってくれたので、唯由たちも一緒にコンビニ弁当を買ってきて食べる。

 唯由と蓮太郎が旅行に行く話や実家の話を興味津々聞いていた潔子が、
「お二人は許嫁とかなんですか?」
と目を輝かせて訊いてきた。

 ……許嫁、と二人はお互いの顔を見る。

 家の格も釣り合っているし、そうであってもおかしくはないのだが、違う。

 というか、私が許嫁とかいう健全な存在だったら。

 この人は後継者に選ばれないようにするために、他に愛人を探してたんだろうな、と唯由は、ちょっと寂しく思っていた。

 そうだ。
 雪村さんは、別に私がスキャンダルの相手じゃなくてもいいんだよね。

 クジ運の悪い下僕が都合よく、側にいただけで。

 ってことは、今回、一緒に旅行行くのも、あのとき、雪村さんが違う番号言ってたら、他の女性だったわけだよね……。

 紗江や道馬が聞いていたら、いやいや、と手を振りそうなことを思い、唯由は悲しむ。

「普通の人間、愛人になれとか、阿呆な申し出受けないから」

 二人に話したらそう言ってくれていただろうが、唯由は口に出しては言わなかった。