ラブラブになる努力は一応した。

 どんなに忙しくとも寝る前には、メッセージのやり取りをするようにしたのだ。

 だが、朝、冷静に見ると、その内容が毎度、しょうもない。

「家に帰ったら、ムカデが死んでいました(ハート)
 季節の移ろいを感じます」

 まあ、ムカデ、夏の季語だしな……と思いながら、

「何故、そこで、ハートマークだ」
と訊いてみた。

「いや、ショックをやわらげようかと」

 蓮太郎は朝日の中、珍しくメッセージにハートマークがついているのに、なにもラブラブな感じがしない、と思いながら、スマホを見つめていた。

 またある日には、

「昨日一緒にスーパーに行って買った手抜きプルーン美味しかったです」
と唯由が報告してきた。

「タネ抜きプルーンでは……」

 仕事が忙しくあまり会えないので、らしくもなくせっせと平安時代の公達のように文(?)を送っているのに、どうも思っているような展開にならない。

 しかし、手抜きプルーンか。

 手抜きが上手いのは、早月さんでは……。

 朝、研究棟の前の自動販売機に向かいながら、そんなことを思っていたせいだろうか。

 本館に向かう道に、早月の幻が見えた。

 ナース服を着ている。

「あら、蓮太郎くん」