(仮)愛人契約はじめました

「あ、唯由ちゃん、お疲れ。
 伝票持ってきてくれたの? ありがとー。

 って、実は、超超、頼みがあるんだけどっ」

 喫茶の、唯由よりちょっとばかし年上、と本人が言っている中西治子(なかにし はるこ)が手を合わせてきた。

「今ちょっと動けないんだけど。
 急ぎの出前があってさ。

 いつもなら、取りに来てもらうんだけど。
 向こうも手が離せないみたいなのよ。

 もし、時間あったら、研究棟まで珈琲持ってってくんない?」

 映画の割引券あげるから、と言われる。

「いや、別にいらないです。
 今、ちょっと時間あるから、大丈夫ですよ」

 唯由は治子の頼みを引き受け、珈琲ののったトレーを手に喫茶を出た。

「ひっくり返さないでよ~っ。
 ありがと~」
と心配そうな声に送られながら。

 今にもひっくり返しそうな私に頼むとは、ほんとうに困っていたようだ、と思いながら、研究棟に行くと、白衣のおねえさんが慌てて出てきた。