(仮)愛人契約はじめました

「まあ、親兄弟は居ていないようなものなので」

 そう曖昧に言うと、しんみりとした顔で蓮太郎は言い出した。

「そうだったのか……。

 蓮形寺。
 今日から、俺を家族と思っていいぞ」

 いや、あなた、愛人か、私の仕える王様なんですよね?

 だが、王様はさらに、
「お前、うちに住むか?」
 などと言ってくる。

「いや、なんでですかっ」

「お前の家族になってやると言っただろう。
 それに、下僕をそんな倒壊寸前のアパートに住まわせておくことはできない」

 いやあの、下僕なんで、放っておいてください……。

 だが、なんだかんだと揉めたので、つい、

「ほんとにそんなボロくないですからっ。
 その先なんで、見てみてくださいっ」
と言ってしまった。

「……じゃあ、見に行こうか」
と言う蓮太郎に、

 はっ、もしや、これは王様のワナ!?

 私自らが王様を家に招くようにっ?
と思ったが、意外に人のいい王様は、そういうわけでもなかったようで。

「じゃあ、ジュース買ってやる。
 二人で飲みながら、アパートを眺めよう」
と言い出した。