(仮)愛人契約はじめました

「割る前に冷やすべきでしたね」
「そうだな」

「戻る前に、ハウスに寄って、一個甘そうなのもらいましょう。

 で、井戸水で冷やしましょうよ。
 美味しいですよ、井戸水で冷やすと。

 ……小さい頃、井戸で冷やしたスイカを引き上げると女の霊が一緒についてくるとか従兄妹たちが言ってたから、未だにちょっと怖いんですけどね、引き上げる瞬間」

「……そうか。
 俺はもう一度、あのハウスに戻る方が恐怖だけどな」

 クワで割られた真っ赤なスイカを見つめながら蓮太郎が呟く。

「あの密室に、クワ持ったじいさんと閉じ込められたとき、血が凍った……」

 いや、私もいましたし。
 ビニールハウス、外から丸見えですけどね。

 久しぶりに再会した孫と祖父、それに蓮太郎。

 まあ、外にボディガードはいるが……。

 そんなのどかなビニールハウスの中、蓮太郎の頭の中でだけ、緊迫したなにかが繰り広げられていたようだ。