(仮)愛人契約はじめました

 


 真伸の住まいよりは庶民的だが、大きな日本家屋を覗くと、お手伝いの雅代(まさよ)が出てきた。

 近所の年配の主婦の方々が交代で家政婦として入っているのだ。

「お帰りなさい、唯由さん。
 先生は唯由さんがお友だちを連れてこられると聞いて、張り切ってハウスの方にいらっしゃいますよ」

 雅代は笑って、少し離れた場所にある大きなハウスを指差す。

 蓮太郎はお手伝いの人たちで食べてもらえるように、老舗の百貨店で買ってきたという手土産をひとつ、雅代に渡した。

 それでというわけでもないだろうが、雅代は、
「まあ、ほんとに唯由さんは素敵な方を連れてこられて。
 きっと先生もお喜びになられると思いますよ」
とご機嫌だった。

 ……お喜びになられるか。

 その場で誰かになにかをそっと命じたりするかは謎ですけどね、と思いながら、二人は畦道を通ってハウスに向かう。