(仮)愛人契約はじめました

「いやあ、おじいちゃんも叩き上げの人なんで。
 政治家に定年ないですけど。

 今でも空いた時間には畑でクワふるってますよ」

 練行は娘が勝手をしてすまないと父に謝ったようだった。

 いやいや、よそに子どもを作ってた時点で、父が悪いと思うのだが。

 器が大きいのか。

 深く考えていないのか。

「古澤練行……」

 暗い夜道を見据えたまま、蓮太郎は呟く。

「……れんれん仲間だな」

「おじいちゃん、『れん』一個しかないです」

「俺もない」

 などと言っているうちに、アパートに着いていた。