(仮)愛人契約はじめました

「俺にスキャンダルをくれ。
 そしたら、俺は自由になれる」

 あの鳶色の瞳で見つめられ、思わず後退しながら、唯由は思っていた。

 いや、あなたにそんな風にされたら、誰でも、はい、どうぞ、と頷くと思いますよ、と。

 ……でも、私は勘弁だ。

 だが、そんな唯由に蓮太郎は懇願してくる。

「蓮形寺。
 俺と付き合い、そして、背徳的な雰囲気を(かも)し出してくれ」

 ……それ、完全な人選ミスですよ、と早朝のラジオ体操が似合いそうな唯由は思っていた。

「あの~」
「なんだ」

「そもそも、愛人ってなにするんですかね?」

 だが、そこで蓮太郎は首をひねる。

「……なにをするんだろうな?

 そうだ。
 膝に乗ったりするのが愛人じゃないのか?」

「恋人でも乗るんじゃないですか?」

「乗ったことあるのか」

「ありません。
 そもそも、恋人がいたことがありません」
と唯由が言うと、蓮太郎は真顔で、

「そんなに可愛いのに何故だ」
と訊いてくる。

 ひっ、と唯由は怯えた。

 ものすごいイケメン様に手を握られ、顔を近づけられ、そんなことを言われたからだ。

 衝撃が大きすぎるっ。