「愛人の蓮形寺です」 ひいじいさんの塔こと、雪村真伸(まさのぶ)の自宅の一室に唯由はいた。 無駄に広い和室なのだが。 蓮太郎の曽祖父、真伸の後ろには立派な刀が飾ってあって、唯由は反射的に、 殺(や)られるっ、と思ってしまう。 愛人だからだ。 だが、そんな唯由には、今、気になることが二つあった。 一つは、真伸のヒゲだ。 丁子染めの着物姿の真伸は眼光鋭く唯由を見ながら、ヒゲをさすっているのだが。 そのヒゲがオナガドリの尻尾かと思うくらい長く。 どうやってそこまで伸ばしました? とつい見てしまう。