(仮)愛人契約はじめました




「悪の月子との見合いは断った」

 いきなり耳許でそう言われ、ひっ、と唯由は自動販売機の前で固まる。

 棟から棟へ移動する途中、ちょっと一息、と思い、自動販売機を眺めていたときのことだった。

 いつの間にか背後にいた蓮太郎が言う。

「これで俺たちを邪魔するものはなくなったな」

 ……邪魔する正妻がいるからこその、愛人なのでは。

「それにしても、こんなところでバッタリ会うなんて運命だな」
と蓮太郎は言うが、この自動販売機の向かいが研究棟で。

 ここはリラクゼーションルームから見下ろせる位置にある。