(仮)愛人契約はじめました



 
「またメール無視されたわっ。
 朝まで見てたのに、スマホッ」

 意匠を凝らしたテーブルコーディネイトにも、温かい朝食にも目を向けず、月子はスマホを手に憤っていた。

 朝の光眩しい庭がよく見える大きな窓の(しつらえ)られた部屋。

 広いテーブルには自分以外の家族の誰もついてはいなかった。

 月子が起きるのが遅いからだ。

三条(さんじょう)っ。
 このまずいフレンチトーストをさげてちょうだいっ。

 ……三条?
 なにしてるのよ」

 老齢の執事、三条は束ねられた分厚いカーテンの陰に隠れ、外を窺っているようだった。

「月子様。
 実は、この間から、見合い相手の手の者が時折、こちらに探りを入れてきているのです」

「なんなのよ、その見合い相手。
 断りなさいよ」

「いえ、それが、その見合い相手の執事が独断で、コソコソ動き回っているようで」

「そんなのどうでもいいから。
 さっさと、このクソまずいフレンチトーストをさげなさいっ」

 だが、やって来た三条は食事をさげる代わりに、月子の前に一枚の写真を差し出した。

「……誰、これっ。
 めっちゃイケメンッ」

 月子はテーブルの上に置かれたその写真をつかみとる。