(仮)愛人契約はじめました

「家に帰って、ガチャッてドアを開けたら、よろって出てきて。

 自ら外に出て行こうとしてるの。

『行くの?』
 って訊いたら、

『ああ。
 ……達者でな』
 って、フラフラどっかに行っちゃったの」

 あれから見ない、と紗江は言う。

「待ってください。
 ゴキブリがそうしゃべったんですか?」

「ううん。
 ゴキブリの背中がそんな風に言ってるように見えたの」

 いや、背中、つるつるテカテカ光ってるだけですよね。

「どうやって、あのつるんとした背中から読み取るんですか。
 っていうか、その話、なんの関係があるんですか」