「ちょっと切っただけ」

「まったく。気をつけろ」


ぶっきらぼうにそういうと紅蓮はすばやく蘇生術で治してくれる。


蘇生術は高度な術で他者を癒す術だ。その術を侍女の私にしてくれるなんて。


普段意地悪ばかりなのに、ふとした時に優しくしてくれる。


「あ、ありがとう」

「私が見ていないところで怪我するな」

「私だって怪我したくてしてるんじゃないのよ」

「一言多いぞ。先ほどのようにしおらしくしていろ」


口調とは別に紅蓮も白蘭も笑顔だった。


「紅蓮様」


部屋に入ってきたのは紅蓮の側近の朱雀だ。

彼は紅蓮直属の軍、朱雀軍を指揮する。戦は見たことないからわからないが、かなりの手練れだそうだ。

紅蓮が鳳凰で朱雀は火の鳥。それに侍女は八咫烏ってまったくいい組み合わせね。


「白蘭もいたか」


紅蓮の側近のため朱雀とはもう仲良しの友達だ。

私に気づくと笑顔で声をかけてくる。

私も朱雀に小さく手を振って挨拶した。