「…白蘭。目を開けて見てみろ」
忘却湖はそれは美しい場所だった。
大きい湖の周りを光る藻が取り囲み、鉱石がその光に反射してキラキラと輝いていた。
「…綺麗」
「そうだな」
白蘭は笑った。
静かに湖の側に白蘭を下し二人で湖を見つめた。
湖に人間界が映るのを白蘭は目で追っていた。
私には人間界のことはわからないが、きっと白蘭にとっては思い出深い場所だろう。
「…」
「気をつけろ。落ちたら危ない」
無意識に手を伸ばそうと乗り出す白蘭を止める。
忘却湖に入ると記憶と法術を失い人間同様になると言われているが、ほとんどは体が耐えられず肉体と魂が散るそうだ…。
その日以降、白蘭は忘却湖に行きたがった。
何度も二人で忘却湖に訪れるため衛兵も、もう何も咎めなかった。


