デカい声を上げるリカに、鞠が一瞬ピクっと肩を跳ねさせた。
なんだ急に。なずなも珍しくスマホから顔上げて"なんだ"っつー顔してんじゃねーか。
「っ、指輪!」
ビシッと、リカが指さしたのは鞠の手。
入ってきてすぐなのに、よく気づいたな。橘花の婚約指輪は鞠が家に置いてきたが、そこには俺がプレゼントした真新しいリングが嵌ってる。
「ほんとだ。……婚約指輪?」
「まあ、そんなもん」
えへへと笑ってリカの元へ駆け寄っていく鞠。
嬉しそうなそれを横目にソファに腰を下ろすと、女子ふたりはコソコソとガールズトーク中。
……中学でも、鞠は学校に馴染まなくなったし。
高校でもそんなにダチと仲良くしてるイメージがねーから、鞠にとってリカは数少ない話し相手。
リカがあすみの彼女だと知った時の印象は微妙だったけど、こうやって楽しそうにしてくれてんなら良かったと思う。
いつまでも、大事にしてやりてーな。
「何かいいことでもあったか?」
「いや。別に何も」
あすみに聞かれてそう返すけど、あすみのことだから俺の気持ちなんてどうせお見通しだ。
だからこそ、鞠と再会した時、協力してくれたんだろう。
……お人好しだよなぁ、こいつ。
「みんなー!パーティーやるよー!」
ガチャッと。
開いた扉からニコニコのチカサンタが顔を出して、俺らを呼ぶ。めんどくせーけど、ここで乗らないと駄々をこねるのがチカなわけで。



