STRAY CAT Ⅱ




デカい声を上げるリカに、鞠が一瞬ピクっと肩を跳ねさせた。

なんだ急に。なずなも珍しくスマホから顔上げて"なんだ"っつー顔してんじゃねーか。



「っ、指輪!」



ビシッと、リカが指さしたのは鞠の手。

入ってきてすぐなのに、よく気づいたな。橘花の婚約指輪は鞠が家に置いてきたが、そこには俺がプレゼントした真新しいリングが嵌ってる。



「ほんとだ。……婚約指輪?」



「まあ、そんなもん」



えへへと笑ってリカの元へ駆け寄っていく鞠。

嬉しそうなそれを横目にソファに腰を下ろすと、女子ふたりはコソコソとガールズトーク中。



……中学でも、鞠は学校に馴染まなくなったし。

高校でもそんなにダチと仲良くしてるイメージがねーから、鞠にとってリカは数少ない話し相手。




リカがあすみの彼女だと知った時の印象は微妙だったけど、こうやって楽しそうにしてくれてんなら良かったと思う。

いつまでも、大事にしてやりてーな。



「何かいいことでもあったか?」



「いや。別に何も」



あすみに聞かれてそう返すけど、あすみのことだから俺の気持ちなんてどうせお見通しだ。

だからこそ、鞠と再会した時、協力してくれたんだろう。



……お人好しだよなぁ、こいつ。



「みんなー!パーティーやるよー!」



ガチャッと。

開いた扉からニコニコのチカサンタが顔を出して、俺らを呼ぶ。めんどくせーけど、ここで乗らないと駄々をこねるのがチカなわけで。