「え、いいな。
なんか鞠ちゃんにもらってんじゃん」
ふらっと。
奥から顔を出したのは暖で、姿を見て思わず眉間を寄せたのは何も昨日の出来事のせいじゃない。
「……トナカイ?」
「トナカイ。可愛いだろ?」
綺麗な王子様顔にトナカイのカチューシャ。
まあ似合ってはいるが、"似合ってる"もよく分かんねーな。だってトナカイだし。仮装だし。
「暖ちゃんだめ。これぼくのだもん」
どうせチカに被らせられたんだろうな。
手を伸ばす暖と袋を引っ込めるチカ。無言で3秒見合ったかと思うと、いきなりたまり場内で鬼ごっこを始める。……子どもかよ、お前ら。
「鞠、上行こうぜ」
「あ、うん」
「放っといていーから。
無駄に巻き込まれて怪我とかしたらダルいだろ」
そこまで本気の鬼ごっこじゃなくとも、今日のたまり場は飾り付けやらお菓子の山やらでごちゃごちゃしてる。
鞠の手を引いて2階にあがり、いつものように幹部室のドアを開けると、複数の声に「おはよう」と迎えられた。
……よかった。
こっちは下と違って通常通りだな。
「はよ。チカのテンションどうなってんだよ」
「よっぽど昨日さみしかったみたいだよー。
なんか途中まで暖くん来なかったとか……、え?え?えええええ!?」



